許せない!

ある次元ある時間の話

葬式。マスコミが大勢集まっている。

出てきた女を取り囲んでインタビューをするレポーター達。

レポーターA
「犯人についてどう思いますか?」

女はハンカチをすかさず取り出す。


「本当に犯人が絶対に許せません!」

ハンカチを口に押し当てて、目に力を入れて涙を出そうとしている。

レポーターB
「ご家族はどんな様子でしたか?」


「いつもは、笑顔をは絶やさない心の温かいやさしい人なのですが・・・、今日は必死で涙を堪えているご様子が・・・とても・・・とても・・お気の毒で・・・」

女の目から、一滴の涙がようやく流れ出した。そこで女はうずくまる。

女はうつむきながらゆっくりと立ち上がり、マスコミの中をゆっくりと通り過ぎて行く。

マスコミが見えなくなった角につくと、女はハンカチをしまい、キョロキョロとあたりを見回して、誰も自分を見ていないことを確認する。

そして急いでケータイを取り出し電話をかける。


「もしもし、お母さんだけど、タクマ?」

タクマ
「うん、お母さん何?」


「あんた、テレビの録画出来たわよね?」

タクマ
「うん、出来るよ。」


「じゃ、今すぐ、テレビの録画をしなさい!」

タクマ
「で?何とるの?」


「私・・・、お母さんが出ているのを全部よ!」

タクマ
「・・・?」

 第二話

ある次元ある時間の話

部屋のドアをガチャガチャ音を立てて開ける。

子供が塩の瓶を持って玄関で待っている。

タクマ
「お母さん?塩をかけるの?」


「それキャンセル!」

タクマ
「だって、出かける前にいったじゃない?帰って来たら、玄関で塩をかけるようにって!」


「そんなに待てない!後でザラザラした塩を掃除機で吸うの面倒だから。どうせただの迷信よ。」

タクマ
「ちぇ、せっかく思いっきりかけられると思ったのに・・・」


「なんか、言ったか!」

タクマ
「いえ、何も言いません。」

女はドンドンと部屋に入って来る。その後にタクマが続く。


「ところで、録画はちゃんとやったの?」

タクマ
「うん、テレビに映っているのは全部・・・」

女は服を急いで着替える。

ソファーに座り、リモコンを操作して、再生する。

テレビ画面を必死で見ている。


「あっ、映ってる!」

タクマ
「お母さん、お腹へったよ。」


「この局のアングルは今一ね。」

タクマ
「ねえ?お腹が・・・」

画面から目を離さず見もせずに、財布を仕方なさそうに渡す。


「今、私は、忙しいから、家の電話にあるホワイトボードに出前の電話番号が書いてあるから、そこにある好きなものを電話しな!」


「しまったなあ?オーバーアクションをして、目立つのは良かったけど、ハンカチで顔を覆ったおかけで顔が映ってないじゃない!」


子供は財布を受け取って、電話をかけようとする。

女は振り向きもせず、言った。


「あっ待った!私は、お寿司でいいから!」

タクマ
「じゃ、お父さんのは?」


「・・・」

ちょっと考えて


「そんなの適当でいいから。さっさと電話しな!」

タクマ
「じゃ、お寿司にするね?」


「待った!松3人前、梅1人前にしなさい!」

タクマ
「松は3人前だけじゃないの?」


「松1人前は、あんたの分。梅はお父さんの分よ。」

タクマ
「じゃ、残りの松2人前は?」


「当然、私が全部食べるのよ!」

タクマ
「じゃ、最初から言ってよ・・・」

女は聞いていない。

出前がやがて来る。

タクマがお金を払いおつりをもらう。

松3人前と梅1人前が入ったお寿司をふらつきながら、タクマが部屋に持って来る。


「落とすなよ!」

タクマ
「だったら、手伝ってよ!」


「子供を甘やかすのは良くない!」

タクマはやっとこさ、テーブルにお寿司を置く。


「松1人前、残さずに食べなさい!ガリも残さずに!」

タクマ
「でも、食べ切れなかったら?」


「食べ切れなかったら遠慮なく私が食べるから。」

タクマ
「えー!」


「全部食べ切ってないと、私達が松を注文したことが、お父さんに バ・レ・ルでしょう?」

タクマ
「・・・」

END