合法的な大罪

ある次元ある時間

女の部屋。パソコンに向かっている。

画面には、本買取のHPが映っている。


「本でも売るか。」

キーボードを叩き、申し込みフォームに入力する。


「送信と!」

送信ボタンをクリックする。

数日後。同女の部屋。

玄関に宅配便が来ている。

配達員
「○○様からご依頼の、荷物を受け取りに参りました。


「えっと、着払いでいいのよね?」

配達員
「はい。で?お荷物の方は?」


「ちょっと、待って、今、持ってくるから!」

女はそういうと、部屋の奥から、ダンボール箱を重そうに玄関まで、持って来る。


「よっこいしょっと!ふうー、これよ!」

配達員
「中身は本で、いいんですよね?」


「うん、本100冊!」

・・・・・・・・・・・・

約1週間後。同女の部屋。

女が、パソコンに向かっている。

メールをチェックしている。


「あった!本の買取見積もりのメール!」

女は、スナック菓子を一つ口に入れると、モグモグしながら言う。


「しかし、案外メールが来るのが、遅かったな?でも、1冊の本の定価が平均千円として、買取価格が10分の1としても、100円×100冊で、1万円はカタイわね。ワインが一本は買える。へへへへー。」

そういうと、メールを開けた。

メールに書いてあった価格



300


「?」

女は、手元にあった缶ビールを一息にグイッと飲み干した。


「な!な!なんだって!」

画面に顔を近づけて見る!


「1!10!100!300円!」


「くそ!」

女は、缶ビールの缶をギュッと握りつぶすと、ゴミ箱目掛けて、投げ捨てた!

ビール缶は、ゴミ箱の中には入らず、ゴミ箱に当たり、跳ね返って、部屋中を「カランカラン」と音を立てた。


「け!契約解除だ!本を返してもらう!」

女は、本を返却してもらおうと、メールの文章をスクロールさせた。

画面の文字
「・・・、なお本の返却を希望する場合は、荷物の返却時に、送料として、800円を運送会社に支払ってください。」


「!」

女は2本目の缶ビールを開けて、口に流し込むと、スナック菓子を口に投げ入れた。


マイナス800円じゃないか!」

女は、腹いせのために、スナック菓子をガシガシと噛み潰すと少し冷静になって考えた。


「このまま、金を受け取った場合と返却させた場合の差額は300(−800)=1100円か!業者を変えても、これ以上の見積もりを出すという保障はないし、ここは、怒りに任せて、返却させるのは馬鹿だわね?」

缶ビールに口をつける。


「それにしても、あれだけ100冊も送りながら、たったの300円とは、頭にくる!この恨みをどうかして、晴らせないかなあ?」

また数日後。同女の部屋。夜明け前。
女は、手には軍手、服はジャージ姿である。
部屋にある大量の雑誌・新聞・本を紐で結んでいる。結び終わると、その束の結び目を両方の手で一つずつ二本持って、重そうに、部屋を出て、エレベーターにのって、地上に降り、そこから、ごみステーションの燃えるごみ置き場に運ぶ。
これを何回か繰り返す。最後の束を、ごみステーションに運び終わった時は、汗びっしょりになり夜が明けていた。
突然、「ドン!ピカ!」と雷が鳴り、「ザアー」と激しい雨が降り出す。

女が叫ぶ。


「天よ吠えよ!天よ怒れ!そして我が願いを聞き届けよ!」

女は自分が捨てた雑誌・新聞・本の束の山を指差した。


「この我が、怒りの束が、やがて紅蓮の炎に焼かれ、二酸化炭素に変わる時、地球温暖化の名の下に地球を灼熱のベールで包み、数多(あまた)の災害を[あの○○○な業者]にもたらすのだ!ハハハハハー!」

女は雨でびしょ濡れになりながら、笑い続ける。

そこへ、通学途中の少女と母親が、通りかかる。

少女
「ママ、あの、おばちゃん怖い!」


「シ!目を合わせちゃいけません!」

女はキッと、その少女に目を吊り上げて、睨みつける。


「おばちゃんって、言うな!」

雨はただただ、女を濡らし続けていた。

END