世紀の大マジシャン

ある次元ある時間

マジックショウ。大勢の観客がいる。

透明な円筒の容器に人魚姿の美女がいる。

足は魚の尾になっている。

マジシャン
「さあ、この中の人魚の運命は如何に!1・2・3!」

水槽に水が流し込まれる。

中の人魚は、不安そうに動いている。水が人魚の頭の上を越える。

マジシャンが指を鳴らすと大きな布が容器を隠す。

マジシャン
「3・2・1」

花火が爆発して、布が取り払われる。

水槽には、人魚の姿がない。

会場の観客達
「おおー!」

マジシャンはニヤリと微笑む。

マジシャン
「さあ、人魚はどこに?」

マジシャンは会場を左から右の順に指差していく。

スポットライトがそれに呼応し、音楽が鳴る。

マジシャン
「そこだ!」

マジシャンの声とともにスポットライトが止まり。花火が「バン」と爆発する。

スポットライトに照らされていた席には、水槽にいたはずの美女が立ち上がっている。

観客達
「おおー!」

「パチパチ」と割れんばかりの拍手が起こる。

マジシャン
「人魚は水から出ると、足が生えるんですね?」

観客
「ハハハハー」

舞台に、女の司会者が現れる。

司会者
「いやあ、本当に素晴らしいマジックでした。」

マジシャン
「有難う御座います。」

司会者
「あなたは、元お役人という変わった経歴をお持ちだそうですね。」

マジシャン
「ええ、まあ・・・」

司会者
「さしつかえなっかったら、お辞めになった理由をお聞かせ願いませんでしょうか?」


マジシャンは少しためらって。

マジシャン
「まあ、強いていうなら、世紀のマジックをするためですね?」

司会者
「世紀のマジックですか?」

マジシャン
「はい、その前に、あなたに、[世紀のマジック]を一つプレゼントしましよう。」

司会者
「え?私にですか?」

司会者
「ええ、そう例えば・・・」

マジシャンは司会者の顔を覗き込む。

マジシャン
「そう、このシミを消して、見ましょうか?」

マジシャンは、司会者の顔にあるシミを指差す。

司会者
「え?このシミですか?」

司会者は、自分のシミを指差す。

マジシャン
「ええ。」

司会者
「出来るんですか?」

マジシャン
「私に不可能はありません。消してもいいですか?」

司会者はちょとためらいながら。

司会者
「はい。出来れば・・・」

マジシャン
「では。」

マジシャンは、ハンカチを司会者の顔に当てて、目をつぶる。

マジシャン
「1・2・3!」

マジシャンはハンカチを司会者からサッと取り去る。

すると、司会者の顔からシミが取り去られていた。

観客
「オオー」

マジシャンは司会者に鏡を渡す。

司会者
「ええ!なくなっている。」

マジシャン
「ちょっと、[ジ・ミ]ですけどね。」

観客
「ハハハハー」

観客の笑いが収まるのを待って。

マジシャン
「さあ、実は、もう私は、[もう一つ]世紀の大マジック既にしてしまっています。

それも、お客様に対してです。

しかし、今は、その効果は分かりません。」

司会者&観客
「?」

観客がザワつく。

観客
「ザワザワ」

マジシャンはそのザワつきを見てニヤリと笑う。

マジシャン
「その効果が分かるのは、数十年後です。」

そういうとマジシャンは舞台から去って行く。

数十年後

老人
「ない!」

老婆
「ない!」

墓地
数十年後の年を取った元司会者が、墓を訪れる。

元司会者
「あなたの世紀の大マジックがやっと分かったわ!」

墓石にはこう文章が刻まれていた。

数千万人の[年金]を消してしまった

[世紀の大マジシャン]ここに眠る。

元司会者
「シミとともに、私の[年金まで]消してしまうなんて・・・」

END